ただ怖かった 
   
       ただ欲しかった

悲しかった
     
       虚しかった


側に居たいと願ったはずなのに・・・・



遙か彼方で・・・

第13話


薄暗い月明かりの中
自由を失った手足に必死に力を入れてもがいてみる

「ヒっっヒノエっっおやめくださいっ」

『・・・・・』

手足の自由を奪った彼が冷たいのか熱いのかわからないような視線でこちらを見る。

倒れこむように部屋に入ってから
彼女の着ていた着物の紐で機用に手足の自由を奪う
まるで咎人のような格好のが発した言葉は受け入れられずに部屋に響く。

「・・・なぜこの様な事を・・・」

昔の私ならば簡単に抜け出せたであろう縄も熊野で過ごした1年で身体はすっかり鈍ってしまっている

「ヒノエ・・・」


『――――――っ』

一瞬月明かりが強くなりヒノエの悲壮な顔がはっきり映る

「なぜ・・・そんなに悲しい顔をしているのですか?」

『誰にも―――誰にも渡したくないんだっ』

「え・・・?」

『あの山でお前を見つけてからオレの心はお前に囚われてままなのに、
お前は――――っっ』


歯と歯がぶつかり合うような激しい接吻。
とっさに口を閉じたの唇は傷つき鉄の味がする。

「っっ」

業と鉄の味のする箇所を舌で刺激されての口内に簡単に侵入を許す。
呼吸すらも許さないヒノエの接吻に飲みきれなかった唾液が血と混ざり合って頬を滑った。


ポタッ

ポタッ


後ろ手で縛られているにはただ首を横に振るしか抵抗できないのに
ヒノエの腕がそれすらも拒んで次第に頭の芯がぼやけてくる



―本当はもっと時間をかけてオレだけしか見えないようにしようって思っていたけど・・・
                     を他の奴に取られるくらいなら今オレの物にしてあげるよ―


ぼんやりとした頭に直接響くかのように聞こえた低音に
全身の神経が危険を警告を鳴らす



「い・・・・や・・・・・」



蚊の鳴くような声で拒絶するがそれはヒノエの神経を逆撫でするだけで
彼の瞳が本気だと伝える。

この眼を知っている・・・

山である時期になると母上は私を群れから離した・・・

その時の兄弟の目だ・・・



『じっとして無いと・・・痛いのはお前だよ』


小さな小型の刃物でスルスルと上質の着物を裂いていく
冷たい刃物が肌の上を滑る


「いっいやっっっ」


身体をひねって拒絶した瞬間腿に鋭い痛みが走る
その後にまるでそこに心臓が出来たかのようにドクドクと脈を感じる


『動くな・・・って言ったよな・・・』


腿を熱い液体が流れていく。
ソレを気にも留めずにまた刃物が滑る・・・
切り裂いた着物で簡単な止血をしたものの未だにドクドクと脈うつ


の身体を隠しているのは止血のために当てた着物と手足の自由を奪う紐だけ。


『綺麗だよ・・・・他の誰にも渡さない・・・・お前はオレの・・・オレだけの・・・・』



高々と足を持ち上げ何の愛撫も無いままヒノエ自身を押し込もうとする
腿の痛みとは比べ物にならないほどの痛みが走る



「いっいたっっっっっい」


『っくキツイな・・・・・本当は優しくお前を手に入れるつもり・・・だったけど・・・・お前を奪われるならっっっ』


言葉を発した瞬間にぐっっと最奥まで腰を進める
悲鳴に近い声を発しながらは痛みのあまりぐったりとしてしまう。


『これでお前はオレの物だ――――――
             他の誰にも渡さないっっ――――』


「ヒ・・・ノ・・・エ」




薄れ行く意識の中――――


下腹部を襲う痛みと――――


熱を持ったように脈打つ足と――――


ヒノエの悲壮な顔が見えた気がした―――――