弁慶が驚いていた。
ヒノエも驚いていた・・・
なによりも、私が一番びっくりした。
遙か彼方で・・・
第8話
『今日はまた一段と・・・最初にお会いした時はどうなるかと思いましたが、こんなにお綺麗になられて・・・』
「やめてください、心構えを改めただけですから」
熊野に来てから早1年あまり。
2度目の夏が訪れようとしていた。
傷はずいぶん前に完治したと言われていたが、
人として生きていく為に必要な事を覚えるのに思いのほか時間がかかってしまった。
だけど、そのおかげで今では一通りできていると思っているし、目の前の女房さんが太鼓判を押してくれた。
『今日はヒノエ様と弁慶様が来るとおっしゃっていましたから、より力を入れてお仕度させていただきましたよ』
「・・・ありがとう」
最近ヒノエは京という都町にいっていてまったく顔を見ていなかった。
弁慶は弁慶で傷が癒えてからは全く会っていない。
今の私を見たら・・・どんな顔をするのだろうか・・・・。
少し楽しみだったりもする。
2人が来るまでの間、文字の練習を兼ねて書きとめている日々の事柄を書くと
女房につげ、部屋を閉める。
「この部屋にもずいぶんとなじんだものだな・・・最初は落ち着かなかったが」
一人になると、以前の話し方に戻っているが誰も聞いていないのだから関係ない。
文字を書くための場所を整えていざ書き出すと時間はあっという間に過ぎていった。
『さま、ヒノエ様方が参られました』
「あ・・・もうそんなお時間ですか、わかりました今行きます」
書き留めた書物をひとつに束ねて戻った時の様子を聞きながら
少し緊張した顔を隠すために扇を手に持った。
しばらくしてにぎやかな声が聞こえてきた、
同時にその中に女人の声が混じって居る事にも気がつく。
「二人だけじゃない・・・」
なぜだかお腹に重たい石のようなものがずしりと入ったような感覚になった。
これは・・・一体なんなのだ・・・
理解できない状態のまま話声と足音は近づいてくる。
『こんにちは〜』
なんともふわふわした声がしたので振り返ってみたら
そこには小柄で可愛らしく、着物・・・とは違った格好の女の子がひょっこり顔だしていた。
「こっこんにちは・・・」
『・・・・・・・』
「・・・・・・・」
『・・・・・・・』
「・・・・あの・・?」
『こんにちは、姫君・・・どうしたんだい?二人して・・・って・・・・・・?』
女の子が反応ないからなのか、女の子の後ろから顔だしたヒノエまで固まってしまった・・・
そんなに私の格好がおかしいのか、それとも無作法な事をしてしまったのか・・・
『・・・おやさん、ずいぶんと変わられてしまったので気がつきませんでした・・・
この二人はさんがあまりに綺麗だから驚いてるんですよ、勿論僕も驚いてますが・・・・・』
この後、さらに驚くような再開が待っていようとは今の私にはわかるはずもなかった・・・・