何故、焼かれたのか。

それは知ってしまってからでは戻れない。

あまりに理不尽で

あまりに酷な

そんな理由。

出会わなければよかったのか・・・・



遙か彼方で・・・   第6話


『源氏と平家が戦をしている事は知っているね?』

「あぁ」

『今回お前の住む山が焼かれた理由は・・・お前だよ』

「え・・・・」

『源氏の武将の中に、山で狼と住む山神との交流がある物がいる・・・それを平家が嗅ぎ付けたんだ」

心当たりはある。
九郎だ。
だか、交流と言えるほどの交流などなかった。

『平家側からすれば山を知り尽くした山神、
手当たり次第に狼を殺すよりも焼いてしまったほうが早いとの判断だろうね』

「なっ私は山神などではないっ」

『そうだね、お前は神などではない・・・でも、
山で狼に殺されずに共存していた、ただの人なんて、この目で見ないと誰も信じない』

「そん・・・な・・・そんな理由で兄弟達は・・・・」

あの時、一緒に命の誕生を祝った・・・それが原因だと言うのか・・・・
あの時、九郎を迎え入れなければ兄弟や、母上が守ってきた山は焼かれなかったと・・・・

『・・・には酷な話だと思う、だけどこれが戦乱の世の流れだよ・・・
相手に強い仲間が付くかもしれない・・・そんな理由で簡単に消してしまうんだ』

怒りで目の前が赤く見える・・・
今にも沸騰しそうな血液がから中を走る。
頭によぎるのは母上や兄弟達と過ごした山での記憶と【復讐】の二文字。

・・・?』

「怪我が完全に治ったら私を山へ返してくれるか・・・?」

『本当はこのままずっと熊野にって言いたいところだけどね・・・帰りたいかい?』

「帰りたい・・・・母上の所に・・・・」

ポタっポタっと真新しい染みを作りながら涙がこぼれた。
母上が逝ってしまってからは涙など流していなかったのに、
こんなにも、悲しく悔しい。
私が人であるが故に九郎を許し、招き入れたがために・・兄弟が・・山が・・・

さん・・・そんなに強く握っては貴方の手が壊れてしまう・・・』

「っ・・・」

気がつけば涙と同じく掌から血がポタポタと流れ落ちていた。

『姫君のお願いは聞いてしまうたちなんでね・・・しかたない』

「では・・・」

『だけど約束だ、山へは一人では行かせない、オレも一緒に行くよ?
それが約束できるならを山まで連れて行ってやるよ』

「ありがとう・・・ヒノエ」

『さてさん、お話もまとまったところですし、薬湯をのんでくださいね』

差し出されたのは深い緑の茶碗。
中身は茶碗よりも深い緑とは言いがたい色をした液体。

『げぇ・・・・』

「??ありがとう」

、よくそれ飲めるな』

「そうか?山ではもっと苦い葉をそのままかじっていたからな、大して苦く無いぞ」

『そう言って全部飲んでくれるのはさんだけですよ』

とても嬉しそうに、微笑む弁慶。
医者としては処方した薬をすべて飲んでくれる事が嬉しいのだろう。

、お前山から出たことはない・・・といったな』

「あぁ。そうだが・・・」

『・・・・じゃぁ怪我の様子を見ながら、人の世界での基礎知識だけでも覚えて帰りな、お前にとって良い事だから』

「・・・?そうか?では少しずつ覚えていくよ」

そう言った後のヒノエの微笑みに一抹の不安を抱えたが、
私の為になる事だと言われては無碍に断れなかった。





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