ヒトノコトノハ・・・

アァ・・・ソウカ

ワタシハヒト・・・・


遙か彼方で・・・

第1話


狼たちが落ち着かない。
近くで戦がおきているのだろう。

物心付いた時にはこの山に産み落とされた。
性格には、落ちたかもしれないが。

食われる寸前で、長の雌に救われた。
それまで火を通したものしか食べた事がなかったが
差し出された何の肉かもわからない生肉を食べて今まで生きた。

気がつけば、10年・・・・

母である長は今では一人で狩りができなくなりつつある。
そんなおり、戦の流れ矢にさされて母が帰ってきた。

自然の掟・・・・

そう慈しむかのように「捨て置け」といっている・・・

「母上・・・・・・・・っ」

ふわふわだった毛が血でかたまりつつある体を抱きしめる、何かが頬をつたい落ちた。
今まで幾度の仲間との別れでも涙などながさなかったのに。


「そこのもの!!!!!!!」

すぐ近くの兄弟がグゥと低く唸り声を上げる

「何をしている!!!平家の物か!!!怨霊か!!??」

「・・・・・」

「総大将に伝えろ!狼を従えた平家がいると!!」

5歳から人の言の葉など聞いていなかったから、
意味を理解することはできなかった。
ただ弟たちが警戒しているからこいつらが仲間でないことは確かだった。
母上を置いて動けない私をじりじりと囲む武装した男達。

「名を申せ!!!」

「・・・・・・・・」

「名を申せと言っている!!!」

「・・・・・・・・」

「っっ女でもここは戦場、切るぞ!!」

だ・・・・母上を置いては動けん。構うな静かにしてくれ。」

「母上だと!!??貴様が抱きかかえてるのは狼ではないか!」

「人でなかろうが、私には母上だ、静かにしてもらえないのならば、静かにするしかないな・・・」

私の声色を聞いて少し離れた所から見ていた兄弟たちが一斉に唸り声を上げる

「ひぃぃっっ」

武装した男たちは取り囲んだつもりが自分達が囲まれていることに気がつくとおびえだした。

「何をしている!!女人を囲んで!!源氏ともあろうものが!」

警戒を解かなかった。
でも呆気にとられた。

普通狼に囲まれたところに来るか?
よほどの自信家か、
ただの馬鹿か・・・

「すまない、話は聞いた母を送る所を邪魔してしまったんだな・・・、
我々の勝手な戦で矢が母上殿に・・・・申し訳ない。
どうか怒りを静めてはいただけないだろうか?」


「・・・・・・・静かにしてくれ。母上を静かに逝かせたい。」

「すまない、もうすぐ終わる。山を騒がせて悪く思う、山神よ・・・許してくれ。」

「・・・・・・・山神・・・・神などではない・・・人の言の葉はよくわからぬ・・・」

同じように声色で判断した兄弟が母上に擦り寄る。
気がつけばおびえた男たちは遠巻きで見ているだけだった。

「母上といったな、お前はずっとこの山に?」

「ああ、産み落とされて物心ついた頃には此処にいる、私を生かしてくれたのは母上だ。」

「そうか・・・・俺は九郎だ、結といったな?騒がしくしてすまん」

「わかってくれればいい、早く立ち去れ」

そういうと、九郎は遠巻きの男たちも連れ去っていった。
帰り際に「また来てもいいか?」
と添えて・・・

不思議で仕方なかった。
人々はこの山を恐れて近づかない、
仕方なしにつかったにせよ、
こんな場所にまた来てもいいかと問う九郎に・・・・