少しずつ―――
少しずつ―――
忘れていく―――
平和な時代―――
豊かな生活―――
【dilemma】 参話
『殿ーーー!これは何処へ運べばいいかね???』
「あ、それはそっちへ!」
『あいよっっ』
父は大工だった。
小さい頃から遊び場は現場だった。
私が弓道に打ち込むようになったら現場に来なくなって父が寂しいなんてこぼしていたけど・・・
まさかこんな所で役に立つなんて思ってもみなかった。
傷が癒えると共に
少しずつ自分の状況がわかってきた。
此処は私のいた時代ではない事。
働かなければ暮らしていけない事。
そして、此処には譲くんが居ない事。
まずは自分の住む家を作らなくてはと思い、
崩れた家の土台を使ってあり合わせの小屋を作ったら村の人達が教えてくれというので
みんなで一緒になん棟も立てた。
現代ではとても家とは呼べなくても、
雨風がしのげればみんなそれでよかった。
村の人たちは優しかった。
寝込んでいる間世話してくれた人が長になりみなで助け合っている
私が助けた子供の名前はだと名乗った。
今は私と2人で暮らしてる。
『姉ちゃん、今日は山菜が沢山とれたよ』
両手にいっぱいの山菜を自慢げに見せながらがきた。
「そっか!じゃぁ今日は山菜スープにしようね〜」
『やった〜!!変わった味だけどおいら姉ちゃんのすーぷ大好きだよ〜!!』
「はいい子だね、じゃぁ姉ちゃんもう少ししたら帰るから先に行って薪を用意しておいてね」
『うん!!』
元気よく走っていくを見送ると近くにいた男性が声をかけてくる
『殿とはまるで本当の姉弟のようだね』
「は私のたった一人の家族ですから」
『殿がいてくれてこの村も本当に助かってるんだ、ちょっと変わった家だけど丈夫だし』
「私一人だけじゃ何も出来なかったけど、皆さんが優しくしてくれるので助かります」
『今度を連れてうちに飯くいにおいで、殿の話聞くのを女房が楽しみにしてるからさ』
「はい、ありがとうございます」
京の町とは違って、小さなこの村ではお金なんてほとんど使われていない。
ほとんどが自給自足。
が家を建てる手伝いをすれば、村の人は食材や藁などをくれた。
みんな裕福ではないけど、子供が生まれれば村中が喜び、誰かが無くなれば村中が悲しんだ。
一生懸命に生きていた。
村の女達はが教えてくれる変わった料理の話や此処へくる前の話を聞きたがった
毎日を生きるのが精一杯な人々にとってのもたらす話は夢物語。
それでも聞きたいと言われていた。
『殿・・・』
声に振り向くと長が深刻な顔をしていた。
「どうなさいました・・・?」
『近く・・また戦があるらしい、今夜から外には出んほうがいいやもしれん』
「また・・・戦・・・ですか?」
『あぁ・・・野党もでるやもしれん、殿の所は男が居ないからな、出歩いてはならんぞ』
「わかりました。ありがとうございます」
『さぁさぁ、今日はもう終わりじゃー!皆家にかえるぞー』
また戦が始まる。
戦が始まれば、やっと此処まできた村がまた焼かれるかもしれない。
源氏と平家なんて・・・
私に関係ないのに・・・
何も無く過ぎてくれればいいな・・・